『本物の町並が残る富田林』

富田林 寺内(じない)町


富田林というとすぐに思いつくのがPLの花火ですが、近鉄南大阪線の富田林駅から歩いて10分の地区に忽然と現れる手入れが行き届いた古い町並みが寺内町です。


 みなさんの中には江戸や明治の古い町並みを訪ねて木曽街道や中山道を歩いた経験をお持ちの方も少なくはないと思いますが、意外にも灯台下暗しで大阪府下にも決してひけをとらない瀟洒な石畳に白壁、板塀、屋根煙だしが見事に調和した江戸から続く商家群があるのです。

 富田林は室町時代には富田林御坊を中心とした宗教自治都市として栄え、江戸時代以降は木綿や米、油、酒の製造・交易の中心地として南河内一の経済発展を遂げた町でした。
 現存している家屋の多くは当時豪商の住居や商店だったところで、広大な敷地と豪勢な門構え、立派な蔵の数々には圧倒されてしまいます。

 町は現在でも生活の場として利用されているので、子供の声や料理のにおい等人々の息遣いを感じながら散策することができます。
 また古い町並みを大事に保存していこうという意識が住人に浸透しているので、家々も景観を崩さないように改修され、通りにはゴミ一つも落ちておらず、景観を壊す宣伝やみやげもの店もありません。

 欧州のように建物の高さや外観が統一され、子々孫々と可能な限り修復を続けていく美しい街を見るにつけ、観光推進という名目のもと歴史や伝統を断絶し、自然を破壊つくした日本の町の惨状には愕然としますが、ここ富田林の寺内町には他の観光地には希薄になってしまった、古き佳き時代から綿々と続く時の流れを感じさせてくれる何かがあります。

 最近では北区中崎町や中央区空堀の町家のレトロな感覚が不況感やオーガニックブームの延長で見直され、手軽に時代感覚を疑似体験したいという若者達で賑わっているようですが、やはり本物を知らないと歴史への認識も薄っぺらなものになってしまいます。

 一度みなさんも本物の町家が残る富田林に足を伸ばして、ありし日の美しい日本に思いをはせてみてください。

 最後に寺内町というのは文化や信仰の中心であった寺を取り囲むように栄えた町の呼び名で、各地に同じ地名の町が残っています。

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【富田林までの交通機関】
 近鉄あべの橋より南大阪線に乗り富田林駅下車(約30分)

【寺内町に関するリンク】
富田林市
http://www.city.tondabayashi.osaka.jp/
富田林市ホームページの寺内町
http://www.city.tondabayashi.osaka.jp/intro/intro/jinai/index.html
まちなみ探訪
http://www.kiryu.co.jp/hayama/
重要伝統的建造物群保存地区 関宿
http://www.ztv.ne.jp/web/sekijuku/

【その他の古い町並み】
  奈良県橿原市今井町(寺内町)
  三重県鈴鹿郡関町

【おすすめ本】
  季刊誌「考える人」(新潮社)創刊号・第2号
   連載中『醜い日本の私』 中島義道氏

  日常いたるところにあふれかえる騒音や雑音にあまりにも鈍感
  すぎる日本人。他人への押しつけがましい〈優しさ〉を期待す
  る日本人の姿を社会の問題点としてとらえ、新たな視点から啓
  蒙した「うるさい日本の私」の著者、中島氏の新連載です。

  いかに我々が無意識のうちに不快な美しくない空間に慣らされ、
  生活しているのか、その矛盾や原因を舌鋒鋭く解き明かしてい
  る快作です。