interview インタビュー   壱岐琢磨さん

 

終わらないバイブレーション

 

 

 

Prifile

大阪校19期生。

菊地寛賞をシナリオ部門で受賞。本年、小説「深層の恐竜」を出版。

 

 この夏、シナリオセンター在籍者・卒業生に向けて、ご自身の小説『深層の恐竜』をシナリオ(脚色)化する懸賞を公募して下さった壱岐琢磨さん。15年前、大阪校で新井先生の基礎科19期生として、また倉田先生のゼミ生として学ばれた私たちの大先輩です。

 今回、懸賞を設けられたのは、まず、原作の『深層の恐竜』をシナリオに、そして映像に、という方向性の第一歩であったわけですが、壱岐さんの「将来自分の好きな作品、いいなと思う本が話題になって、たくさんの人に読まれる社会になってほしい」という願いと「いいもの」にこだわることの具現でもありました。

 壱岐さんは94年に脚本『撫子』で第四回菊池寛ドラマ大賞を受賞。新井先生が受賞式にかけつけて下さり「こんなにワクワクしたシナリオは初めてだよ!」と、とっても喜んでくださった思い出を、人生の宝物のように大切にされています。「新井先生には恩返しが出来たから、次は小説を‥」と新しい展望を持たれた時でもありました。

 以来「仕事も好き」という会社員のまま、小説家の道を進まれる壱岐さん。「ちゃんと内容のある面 白いものが書ければ、自然とたくさんの人に読んでもらえると信じています。作品自体に力があれば、絶対認めてもらえるという確信があるんです」とおっしゃいます。 壱岐さんにとっての小説は、単にものを書くというよりも、それは「一生のこと」。「新井先生があんなに高齢にして、あんなに楽しそうにシナリオの話をされたように、自分も書いていければいいなと思います」。壱岐さんもまた、一生をかけられることへの終わらないバイブレーションを持ち続けていかれるのです。

■壱岐さんから、シナリオを学ぶ私達のために貴重なアドバイスをいただきました。

 「一度書き始めたものに違和感があったり、筆が止まって悩むということは、どこかが間違っているということです。仕方なくちょくちょく書き直すことは出来ても、本当にそこまで書いた200枚の原稿を捨ててしまうことなんか出来ないのです。でも、自分の書いたものに固執しすぎると、作品を正直に見られないし、本当にはこなれてきません。作品という結果 にこだわらずに、いつでも捨てられる自由さを身に付けること。例え作品の入ったフロッピーを失ったとしても、いろいろ発想し、創作出来る自分がいることを大切に思うべきです。ぜひ一度捨ててみて下さい。そこから始まることがあります」。


■『深層の恐竜』のご紹介

 『深層の恐竜』は、平成14年が舞台の近未来SF新社会派ミステリー。「今書かなければ、今でなければ」という逼迫した書き下ろしだったそうです。かなり取材を重ねられた上での執筆と聞けば、2年後の緊迫する国際情勢、その中で起きる凶悪事件が「小説の中のこと」に思えず、「もしや予兆でも掴んでおられるのでは」という念にかられます。ここで語られる「恐竜」とは世論、マスコミ、警察などが同一の先入観を持ち、日本中が一色に染まり一つの方向へ向かって突き進んでいる状況を比喩したもの。「恐竜」に人生を踏みつぶされた男が仕掛ける「どんでん返し」には、その「恐竜」の特性が使われていた!? 日本社会の有り様が浮き彫りになるストーリーが、心に消えないある視点を残します。

 「誰もが勘付いているような、その実ちっともわかっていないこと」を言い得て妙なる 『深層の恐竜』は、シナリオ化に挑まなかった方々にもぜひ読んでいただきたい一冊です。小説のテーマであるところの「正義のない社会の恐さ」を皆さんの心にも投じてみて下さい。 壱岐さんおっしゃる「読み始めは少々苦しくて、読んで行くほどに爽快な気分が味わえる『山登り説法』」で書かれていますので、そういった意味でも充実度満点にお楽しみいただけます。きっと壱岐さんの次の本も待ち遠しくなるはず…。 

 

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  interview インタビュー   関えり香さん

 

素直に、まっすぐまっすぐシナリオライターになった人

 

 

 

Prifile

大阪校46期生。

シナリオ・ライター。
「QUIZ」「真夏のメリークリスマス」(共にTBS)を執筆。

 


 ある日ふとドラマを書いてみたいなと思ったのが98年暮れ。99年春には大阪校の46期生として学び、2000年2月にはTBSの深夜枠ドラマでデビューしてしまった“プリティ−ウ−マン”関えり香さん。(関さんのお友達の方が、この一連のサクセスを「それって『プリティウーマン』か何かみたいよね」とおっしゃったそう。可愛い例えで関さんにぴったり。)なんと記念すべきデビュー作が、幸運にも20数回目の誕生日にオンエア!「今までで一番嬉しいバースデイプレゼントでした…(笑)」と、幸先の良いスタートを切って東京へ移り住まれ、現在大活躍中です。

 はてさて階段を2段飛ばして駆け上がるように、プロのシナリオライターになった関さんのチャンスは、東京校主催の『99年ふれあい夏合宿』にありました。講演に来られていたTBSのプロデューサーの方が深夜ドラマを公募され、関さんの応募作が目に止まったことでお仕事に繋がったのです。

 それには、関さんが「仕事をするなら東京で」という決心が既にあったこと、タイミングを逃さない利発さと、期待に応えられる腕があったこと、恐れを知らぬ 素直さ(!?)があったことが欠かせなかったのではないでしょうか? そして、この春のTBSドラマ『QUIZ』にてライター3名の内の一人として執筆。あの複雑なミステリーに取り組んで、なんと腸炎を発症! 緊急病院のお世話になり、机の前に座っておられない程のコンディションの中で、耐え難きを耐えて書き抜いたいわくつきのドラマに…。(『QUIZ』はビデオリリース中。関さんの作品にお目にかかれます。)「ライターという大役の恐さ、何と言っても体が資本なんだな」ということをつくづく感じたそうです。

 「まだ売れっ子じゃないので、街でアルバイトのチラシなんかをみると『もしダメになるようならアルバイトでもするか…』としっかりチェックしてしまいます」という関さんですが、なんの、秋のTBS金曜ドラマ(10月13日夜10時スタート)『真夏のメリークリスマス』でも2人のライターによる共同執筆で、竹野内豊さんと中谷美紀さんの切ないラブストーリーを、テレビにかぶりつく私達にた〜っぷり魅せて下さるそうです。「レベル的には基礎科で学んだ頃と変わってません。今後は自分にしか書けない世界をいかに出していくかが課題です」とおっしゃる関さん、畏縮しないのびやかな心で、これからも伸びて伸びて、ご本人もびっくり(?)の大物ライターになって下さい。大阪からもたくさんの応援が巻き起こりますよ!

 

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