第18回放課後倶楽部 平成16年11月27日(土曜日)
♪東映太秦行進曲 スクリプター篇 
「女30代、がんばるで!」

      谷 慶子先生

   谷 慶子(たに けいこ)氏プロフィール

1968年大阪市西淀川区生まれ。大阪芸術大学映像学科在籍中に、今は亡き脚本家の依田義賢学科長からその学年の脚本賞を頂き、脚本家への甘ーい夢を見始める。その後、師事していた映画監督の中島貞夫氏から「脚本を書きたかったらまず現場を勉強しろ」と言われ、時代がバブルだったのにも助けられて東映京都撮影所へフリーのスクリプターとして入る。以来13年間、ひたすらスクリプターとして数々の映画やテレビの制作現場に携わるが、そろそろ本来の夢に挑戦!と、現場の仕事をしながら書いて応募した脚本「タイ・ブレーカー」が、2003年(第29回)城戸賞で準入賞。正直、驚く。しかし今度は脚本家への から〜い道のりを経験。そのさなか、作家のつかこうへい氏と出会い「タイ・ブレーカー」を戯曲として舞台公演(北区つかこうへい劇団10月29日〜31日・東京)をすることになる。今回は、撮影所のお話、脚本「タイ・ブレーカー」についてのお話、舞台のお話などできればと考えておりますが、私もまだまだ発展途上の36歳…皆様と一緒に楽しみながら時間を過ごせたらと思っております。 

▼スクリプターとして携わった作品 

●映画→「RED SHADOW 赤影」(主演・安藤政信)「極道の妻たち〜決着〜」(主演・岩下志麻)●テレビ→「忠臣蔵」(主演・松平健)「子連れ狼」(主演・北大路欣也)「銭形平次」(主演・村上弘明)「科捜研の女」(主演・沢口靖子)等々

▼「タイ・ブレーカー」(城戸賞入選作)あらすじ

 「由紀ちゃんは天才野球少女やろ、日本初の女子プロ野球選手になるんやろ」 自信満々に頷き返す由紀子は大の野球少女。由紀子の父・幸治郎は生活の為に挿し絵等を描く絵描き。母・ひろ子は働きながら家族を支えるしっかり者。歳の離れた姉・彩子は将来有望なインテリアデザイナーだった。そんな家族の中で元気一杯男勝りに育った由紀子は、成人して社会人女子ソフトボールのスター選手になっていった。大阪にある協和製薬ソフトボール部に所属する由紀子は、チームの中心選手として大活躍!…みごとリーグ優勝を果たす。その二年後…共に優勝を勝ち取ったチームメイト華子も結婚して一児の母。由紀子は相変わらず協和製薬総務部で事務をとりながら「ソフトボールが恋人や!」と明るく逞しい「ソフトの虫」の日々であった。そんな時、父・幸治郎が大腸ガンの手術を受けることに! 手術当日はリーグ戦の開幕日。二人はチームの勝利と手術の成功を『温泉を賭けて』約束する。張り切って試合に臨む由紀子だったが、延長戦、捕った球を投げようとした時、体に激痛が走り大暴投!逆転負けを喫してしまう。そして医者から、ケガが完治するまで約一年の試合出場禁止を言い渡される。手術は成功したものの、幸治郎は人工膀胱 ・人工肛門に! 不自由で不安だらけの生活が始まる。ソフトができない由紀子が久々に実家に帰ると、そこには以前とは全く違う父と母の姿があった。父に対して冷たい母、その母に何も言えないでいる父。ギシギシと家族の絆が壊れそうな時に、頼りの姉・彩子も「大きな仕事をする」とイタリアへ旅立ってしまう。由紀子はソフト部から引退を勧告され、更に幸治郎は緊急の再入院! 「自分は一体何をしてきたのだろう?」今までの生き方に疑問を持った由紀子は、会社とソフト部に辞表を提出し、父と娘の闘病生活が始まる。父の世話を娘に任せきりの母夫婦って、家族って一体何…?苦悩する由紀子は、ソフト部を辞めたことをついに隠しきれなくなり、病状が悪化し錯乱気味の父に告白する。「由紀ちゃん、自分の好きなもんは大事にせなあかん、辛いことも一杯あるけど嬉しいことも一杯ある…お父さんは幸せやったで…」数日後、幸治郎は、ひろ子、彩子、由紀子に見守られながら息を引き取る。幸治郎の死に直面して浮かび上がる、家族の姿。母は、姉は、そして由紀子は…。重たくなりがちな題材を、笑いと人情の大阪パワーで描く大阪下町悲喜劇(コメディ)!

講義内容

 ポジフィルムにネガ、撮影所の写真、舞台のビデオ、使用前使用後の現場台本! シナリオライターを目指すスクリプター(記録)、谷慶子先生の御講義は、興味深いお話プラス、現場の匂いが伝わるツールもあり、参加者は楽しみながらしっかり取材できました。

 大学時代、授業の一環で坂本竜馬のシナリオを書き、竜馬と自分の生き方をシンクロさせたエピソードから始まり、東映でのスクリプター人生と撮影所裏話。城戸賞を受賞された「タイ・ブレーカー」の執筆や舞台化にまつわる面白&苦労話など、ワクワクするお話をハイテンションで語って下さいました。

 撮影所という特殊な世界は参加者の憧れの場所。1本の作品が完成するまでに関わる人の多さと日数の長さからは、スタッフの方々の映像に対する情熱が感じ取れました。特にスクリプターの仕事の細やかさやハードさには驚くことばかり。タフな女性像がくっきりと浮かび上がりました。

 そして印象的だったのは、「脚本を書きたいなら現場を覚えろ」と、東映を紹介してくれた中島貞夫監督や、改訂版シナリオの台詞直しまでさせてくれた斉藤光正監督。「タイ・ブレーカー」を舞台化してくれたつかこうへい氏、等。「出会えてよかった!」と思える人達の人間味あふれる逸話でした。

 最後は、「ここにいる人は観る側じゃなく創る側。一緒に頑張っていきましょう!」と力強いメッセージ。大きな励みとなりました。


参加された方々のお声
・先生! 僕が先生に作品を見て頂くまでにどれだけの時間がかかるのかわかりません。でも、これだ! というものができた時は是非、アイデア、脚本、その他色々聞いて下さい。僕も日本のエンターティメント、もっと素晴らしいものにして行こうと思っています。日本であろうが世界であろうが、僕らの作るものが皆に心からの感動を生むと良いですね。

・エネルギーにあふれていらっしゃる先生で、びっくりしました。おかげで私もエネルギーをもらいました。

・自然体のお話でおもしろかったです。やっぱり人との出会いも大事だなと思いました。

・斉藤光正監督の話に熱が入っていて楽しかったです。撮影所の中がたくさん見られて、うれしかったです。中々ありませんよね〜。お話を考えることよりも人間をどう描くかが大事とゆう一言は大変為になりました。私よりも一つ年下の方が、エネルギッシュにお話しして頂いて大変為になりました。

・すばらしかったです。ひたむきな生き方が感じられ、感激しました。これからのご活躍を願ってます。

・人間力って大事なんだと改めて思いました。

・普段はお話を作ることに夢中ですが、やはり実際の現場を知ることも大切だと痛感しました。


・映画の楽しさが伝わって来ます。撮影の裏話が、ご本人が好きだからこそ伝わって来るものもあります。若いから出るエネルギーでしょうか? 好きなことを探し求めるエネルギーでしょうか? 元気になりました。苦しいことをも楽しさを見出す手段と考える精神、見習います! シナリオを書くってすごくエネルギーが必要ですが、他の人にパワーを与えることが出来るのですね。

・「タイ・ブレーカー」のビデオを見せていただき、おもしろかったです。お話も色々な経験をお聞かせいただき、参加させていただいて良かったです。

・撮影現場話などとてもおもしろく語って頂いて、ためになりました。