1997年大阪校5枚シナリオコンクール最優秀賞作品 
課題「惚れた瞬間」


十年後への君へ  作:長谷川 靖(43期生)
<人物>
西尾 和人(12)(13) 小学生
岩崎 理沙(12)(13) 西尾の同級生
永松 宏伸(12) 西尾の同級生
入学してまだ三ヶ月、そんな長谷川さんが並みいる先輩をさし置いて、最優勝に選ばれたことは何と言っても素晴らしいことだし、大いに刺激になることです。
○小学校・教室
   生徒達が授業を受けている。
   黒板に「タイムカプセル製作」の文字。
   先生の目を盗み、ひそひそ話をしている西尾和人(12)と永松宏伸(12)。

永松「じゃ、誰? このクラスの女子か?」


   真っ赤になり、領く西尾。

永松「俺の好きな子も教えるから、セーノで指さそう。いいか、セーノ・・・」


   同じ方向を指さす2人。
   その先に座っている岩崎理沙(12)。
   驚き、笑い合う西尾と永松。
   永松、ふと机の原稿用紙を見る。

永松「そうだ! タイムカプセルに、あいつ宛てのラブレター入れようぜ」
西尾「え?」
永松「あいつ、10年後に見たら驚くぜ!!」


   にっこり笑う西尾。書き始める2人。

○葬儀場
   葬儀が行われている。
   飾られている永松の写真。
   参列している、詰め襟姿の西尾(13)
   少し離れた所にセーラー服姿の理沙(13)。
   西尾、理沙を見つめ、やがて出て行く。

○小学校・校庭
   地面を堀り返している西尾。
   やがて、中から箱を取り出し、続いて一編の作文を取り出す。

○岩崎家・玄関
   立っている西尾。中から出てくる理沙。

理沙「西尾君!!どこ行ってたの!?」


   黙って作文を差し出す西尾。
   表紙には『10年後の君へ 永松宏伸』。
   受け取り、読み始める理沙。

西尾「あいつ、お前の事好きだった…今さら伝えても、どうにもならないけど…せめて
 忘れないでやって欲しいと思って……」


   読み終える理沙。西尾を見る。

理沙「あなたも、私の事好きなの?」
西尾「え?」


   声に出して読み始める理沙。
理沙「10年後の理沙。君はきっと美人になって男に不自由してないだろうが、すぐ側に
 もいい男がいる事を忘れるな。その名前は西尾。奴は一生お前を愛せる奇特な男
 で…」
西尾「あいつめ…」
理沙「今度、2人でお墓参り行かなきやね」


   にっこり笑い、領く西尾。
 

 <終>
【ノミネート作】
「別れ道」 今石浩一
「動かないで」 荒井敬司
「別れは出会いのはじまり」 古西卓也
「ヒールを脱いだら」 田嶋久子
「セイント・パンダ」 河津万有美