2004年大阪校5枚シナリオコンクール最優秀賞作品 
課題「台風の目」


いのち  作:岩ア亮平(57期生)
<人 物>
岡田透(30) 会社員
岡田花(27) その妻・妊娠10ヶ月
救急隊員
救急隊長
警察
野次馬
赤いスポーツカーの男
赤ん坊
淘汰されていく人々の災害の中で、赤ちゃんの誕生。新しい命が与えてくれる、なにものにも変えがたい希望を感じさせる力強い作品です。
○国道2号線尼崎付近(夜)
   
走る車は疎らである。
   そこを一台のカローラが猛スピードで駆け抜けている。

○車の中(夜)
   
岡田透(30)が脂汗を流し車を運転している。
   岡田はバックミラーをチラッと見て岡田花(27)に話しかける。

岡田「おい花! 耐えられるか! 生まれんのか!」
   
花は後部座席に座って悶えている。が、小刻みに2回頷く。
岡田「もうすぐだから! な、花!」
   
岡田がアクセルを踏み込む。
   交差点にさしかかり右方向から横断しようとする車が岡田の車の行く手を遮ろう
   としている。
   岡田はそれに気づき、急ブレーキを踏む。

岡田「うわぁーっ!」

○国道2号線尼崎付近交差点(夜)
   衝突した2台の車が無残にも大破している。その周りを救急車やパトカーが囲
   み、救急隊員は救助を警察は無線でやりとりや、交通整備に忙しく動いている。
   野次馬も騒いでいる。

救急隊員「白のセダンから男性一名、女性一名、赤のスポーツカーから男性一名、
 以上三名死亡確認しました」
救急隊員「了解。即刻尼崎市立病院へ直行」
   
救急隊員は頷く。

○救急車運転席(夜)

   
救急隊員はドアを開け運転席に乗り込み無線機を取ろうとする。その時野次馬
   の一人が叫ぶのが聞こえる。

野次馬「なんか車の下で動いてんぞー!」
   
救急隊員は驚き窓の外の車を見る。

○国道2号線尼崎付近交差点事故現場(夜)

   
そこにいる全員が車の下を見つめ騒然としている中、救急隊員が駆け寄りその
   何かを抱き上げる。
   血まみれの赤ん坊である。息も微かである。そこにいる全員が静まり返って救急
   隊員とその赤ん坊を見つめている。
   突然救急隊員が赤ん坊の尻を叩き出す。
   みんなそれを見て呆然としている。
   その時、赤ん坊が生まれ立ての声で泣き出し体を激しく動かし始める。


 <終>
【ノミネート作】
「月が出るまで」土A作家集団 湊ゆき子さん
「君が見た奇跡」土M研修科 宮本ゆかりさん
「機上の三人」土A作家集団 木村敏男さん
「この恋の現在位置」土A作家集団 すがひろしさん
「いのち」基礎科 岩ア亮平さん