2009年大阪校大阪校わいわいクリスマスパーティ
課題「チェンジ」


サンタが家にやってきた  作:杉元 大丞(65期生)
<人 物>
 浜田瞳(32)亡くなった正也の妻
 浜田実(8)瞳の子
 浜田正也(35)瞳の夫
最優秀賞の「サンタが家にやってきた」は、亡くなった父から息子への想いが描かれた、とてもあたたかい作品でした。5枚という長さで、ダブルのチェンジへのサスペンス性と、ドンデンのラストからは幻想的で普遍的な愛情が伝わり、みごとにシャープでハートフルな仕上がりになっていました。杉本さん、おめでとうございます!
○浜田家・リビング(夜)
   
クリスマスの飾りつけがされた室内。部屋の隅に浜田正也の遺影。
   チキンやケーキなどを食べた後の皿を浜田瞳(32)が片付けている。
   テレビを見ている浜田実(8)
瞳「実、早く寝ないとサンタさん来ないよ」
実「早く寝てもサンタは来ないよ」
 
  実、正也の遺影を見ながら
実「みんな言ってる。サンタはお父さんだって。
 だから家には来ない。絶対に」

   寂しく俯く実。実を見つめる瞳。 
   玄関チャイムの音。
○同・玄関(夜)
   洗覗き穴を見ると、小さく微笑み頷く瞳。
実「誰?」
   瞳、微笑んだままドアを開ける。
   サンタの格好の浜田正也(35)が入る。
実「(驚いて)お父さん!?」
正也「メリークリスマス!」
   正也、実に大きなプレゼントを渡す。
実「何で?病気で死んだはずなのに……」
正也「ああ。でもな、父さんどうしても実に会いたくて。だから神様にお願いしたんだ。
 そしたら、見ろよこの格好。これで会いに行けるだろって」

   満面の笑みの正也。瞳も笑顔。
   実、正也を見て寂しそうに俯く
実「……そっか。ありがと、おじさん」
正也「え?」
実「真也おじさんでしょ。だってパパと双子 だもん。パパのふりなんて簡単だよね」
正也「(実に手を伸ばしながら)……実」
実「帰って!!」

   実、プレゼントを壁に投げつけ、部屋に行こうとする。実の手を掴む瞳。
瞳「待って、実。ごめん、母さんが軽はずみだった。真也さんも本当にごめんなさい」
   携帯音。着信は真也。不思議そうな表情を浮かべながら電話に出る瞳。
真也の声「ごめん、義姉さん。道が混んでて、後1時間位かかりそうなんだ」
瞳「何言ってるの?あなたは今ここに……」

   正也を見る瞳と実。正也の体が徐々に透けていく。驚く瞳と実。
瞳「……正也……さん!?」
正也「(微笑んで)瞳、実、メリークリスマス」

   完全に消える正也。プレゼントのリボンが小さく揺れている。
(終)


●最優秀賞
「サンタが家にやってきた」研修科・杉元大丞
●東京校賞
「偽りの花嫁」作家養成講座・瀧川ゆかり
応募総数 73本